【WBC】準決勝 日本VSプエルトリコ 結果

※平日の昼間からネタばれ全開なので詳細な結果を知りたくない方は注意。
 
 



プエルトリコが理想的な試合運びで日本に快勝し、WBC2連覇中の日本は準決勝で姿を消すこととなった。
この試合を語る際に見逃せないポイントがある。
 
【可変ゾーン審判】ストライクゾーンが偏っている審判は多いが、偏っていても審判個人個人でゾーンがあるわけで、先発投手はそこにアジャストしながら投げるのが通常だ。しかし、今日の主審は「試合中にストライクゾーンが変わる」可変ゾーン審判だった。序盤から中盤はアウトコースが狭く低めが広いという厄介なタイプで、終盤はアウトコースも広くとっていた。どちらかを贔屓していたわけではないが、両チームとも頭が痛かっただろう。
 
・先制シーン
 試合全体の流れとしては、1回表、先発の前田健太が可変かつ独特なゾーンを持つ審判を相手にストライクコースを探りきれず、2四球でピンチを背負い、よりにもよってプエルトリコで今大会一番当たっているアービレイスに対してインコースから入ってくる甘いスライダーを投げてしまい、センター前に運ばれ先制される。四球でピンチを作り、好調の打者に失投を運ばれるという、先制のされ方としては最悪な幕開け。
 
・序盤〜中盤
 マエケンは2回以降は立ち直り、5回まで散発の3安打に抑え、自身の好フィールディングもあり最少失点で切り抜ける。
 対する日本、4回まで井端の1安打のみ。リコ先発のサンティアゴは、右打者に対してはツーシーム&スライダーの左右の揺さぶり、左打者に対してはチェンジアップを織り交ぜて打ち取るパターンの、さして珍しくもない投手なのだが、日本打線、もしかしてなんも対策してこなかったの?と思うくらいの無策ぶり。ツーシームはひっかけてゴロ量産するわ、左打者のチェンジアップは情報にあるはずなのに追い込まれてから決め球にされるわ、攻略の兆しもない。台湾戦での対王健民では、点には結びつかなかったが打線が対策している分、望みがあった。だがこの試合ではそういう雰囲気もない。4回裏にヒットの井端が二塁まで進むが、阿部がボテボテのキャッチャーゴロで終了。
 
・5回裏
 試合のポイントのひとつ。先頭の坂本がヒット、糸井のバント失敗からの進塁打で1死2塁というチャンスを作り、打者中田のところで2ボールから投手交代。2番手はデラトーレ、150km/h近い直球とそこそこ切れるスライダーとしょんべんチェンジアップを操る右腕。中田は直球一本狙いでスライダーを2球クルックルだったが、追い込まれてからは選球眼を発揮し、外のスライダーを見極めて四球で出塁。ここまでは良かった。続く稲葉が3球振りにいくも低めのクソボールのチェンジアップで3球三振。第一打席も低めのボール球を振って三振しており、アメリカに来て一体どうしちゃったんだい?と心配してしまうくらいの変わりよう。選球眼もクソもなく、次の打席で代打長野を告げられたのもやむを得ない。
 続く松田はストレート2球で追い込まれ、2球外のスライダーを見逃し、5球目のストライクコースのスライダーで三振。大きいのを打ちたい中田が我慢してつないだのに、後ろの打者が扇風機になってどうすんの?という雰囲気。
 
・6回表
 マエケンからノウミサンにスイッチ。結果論になるが、この継投がよくなかった。勝っているならまだしも、ビハインドで1点もやれない状況なので、ここから摂津でいくべきだった。とはいえ、ノウミサンの球は走っており、150km/h近く出している。ヒット1本打たれるも、無失点で切り抜ける。
 
・6回裏
 先頭の鳥谷、ゴロ。3打席ともゴロゴロ。あかん。井端は2球目、ピッチャーのテンポが速すぎてタイムを要求するが認められず、2ストライク。3球目、外のクソボールのスライダーを気のないスイングで三振。ふて腐れたのかもしれないが、ああいうのはいかん。続く内川が左中間へのライナー、センター飛びつくが後逸してスリーベースに。一瞬ホームまでいけるか?とも思ったが、コーチは無理をさせなかった。続く、阿部のところで左腕のセデーニョが登板。横手気味のフォームから140km/h台の直球、スライダー、チェンジアップという、これまたよくいるタイプの左腕。阿部はインコースツーシーム2球で追い込まれてからのアウトローのワンバウンドのスライダーで三振。阿部も井端も普段は振らないのに、今日は本当にこういうシーンが多かった。
 
・7回表
 ノウミサン、続投。ちょっとよくわからない。準決勝でもいつものように手遅れになってから交代させるのかよ、と思って見ていた。好調のアービレイスにヒット、ここでも代えない。そして冷凍中だったリオスに、ど真ん中の抜けたチェンジアップをレフトスタンドに運ばれて勝負あり。ここでようやくピッチャー交代。だから、なんでこの大一番でシーズン中のような継投なんだよ! 摂津が2アウトから四球とヒットでピンチを作り、すぐに杉内にスイッチ。3点差になってようやく、早めに継投するようになる。遅いんだよなぁ…。杉内、ピンチを脱する。
 
・7回裏
 リコは左腕のセデーニョが続投。糸井が死球で出塁するも、中田がフライ。スイングはいい感じなだけに擦り気味なのが惜しい。そして打線の中で最も当たる気配のなかった稲葉に代打、長野。アウトローに素晴らしいカーブを決められ追い込まれる。ここまではいいが、ベース手前でワンバウンドするようなチェンジアップを振って三振。選球眼とかそういう問題じゃねえ。
 
・8回表
 杉内続投。先頭打者を稲葉に代わってファーストに入った中田がエラー、一死後に四球を出して、わくわくさんに交代。直球、変化球とも切れ切れで日本にいたころとは別人のようになっていたが、アウトローのいいスライダーを審判が拾ってくれず、結局センター前にライナーで運ばれ、満塁にしたところで降板。1死満塁で登板した山口、三振と1ゴロで窮地を脱する。投手陣では山口が最高にいい仕事をした。
 
・8回裏
 リコの投手はフォンタネスに交代。なんかもう印象にも残ってない右腕。松田はひっかけて遊ゴロだったが、鳥谷がフルカウントからセンターオーバーの三塁打、井端神が芸術的ライト前タイムリー、内川センター前と打線がつながり、1点返してなお1死1、2塁というチャンス。しかも打席は4番の阿部。最高の場面だ!
 
 と、ここで信じられないミスが起きる。
 
 1ストライクからの2球目、インコースの直球でボール球だったが、ここでランナースタート。二塁走者の井端はスタートの構えだけして二塁に戻ったが、一塁走者の内川はお構いなしとばかりに二塁まで到達し、井端とお見合い。井端がベースについていたのでそのまま捕手に追い込まれてタッチアウト、阿部もセカンドゴロで凡退し、反撃ムードが一気にしぼんでしまうプレイとなってしまった。
 この敗退を決定付けた不可解なプレイだが、解説も終始首をひねっており、試合後に説明を聞かないとわからないと言っていた。
 試合後、2時間が経過した現在判明しているところでは、監督はダブルスチールのサインだったと言ってるのだが…
 
ダブルスチールをしてもいいというサインだったが、二塁ランナーの井端選手のスタートが遅れて、ああいう結果になった」
 
 wwwwww???!??!?!?!??!?!??wwwwwwwww
 よくわからないコメントだ。
 考えられる可能性としては、
1.「ダブルスチールのサインが出ていたが、井端がサインを見逃したか、サインを勘違いしたか、サインを理解していたがスタートが遅れて遂行できなかった」
2.「ダブルスチールのサインは出ていないのに、内川が勘違いしてスタートを切った」
3.「選手の判断に任せてあり、井端は三盗を試みたが無理と判断して帰塁した。しかし内川は井端がスタートを切ったところしか見ておらず、合わせてスタートを切るも帰塁するのを見ていなかった」
 
 くらいかと思ったが、山本監督のコメントだと、ニュアンスとしては3に近いのだろうか。
 仮にランナーが一人で2盗を狙うなら「個人の判断で走ってもいい」というグリーンライトならわかるが、あの場面、2点差で負けている終盤の8回に、チャンスでバッターは4番、捕手はMLB最強の肩を持つモリーナ、ランナーは37歳の井端という場面で、いくかいかないかはっきり決めずに、「いけたらいっていいよ」程度のあいまいな作戦のままだったのだろうか?
 だとしたら、手を打たなかった監督が悪い。重盗するならするで代走を出して走らせるところだし、阿部に任せるならはっきり任せて打席に集中させなければいけない。
 こういう、誰のミスで引き起こされたのか曖昧にしてしまうような説明はもやもやする。
 仮の話だが、もし内川が「走るかどうかは選手の判断に任されていた。井端が走ったのが見えたので自分も走った。途中で帰塁するのを見逃した自分のミス」と言えば、それで納得する話だ。捕手はモリーナだし、重盗だった場合でも二塁で刺されないために全力で走らなければならず、井端のスタートを見て全力で走った内川は責められない。滅多に起こらないが、起こり得ることだ。それだけ重盗は難しいし、だからこそ厳密にタイミングを計る必要がある。
 監督が選手をかばって嘘を言っている可能性もあるが、どっちにしろ残ったのは、反撃ムードが一瞬で萎み、そのまま負けたという後味の悪さだけだ。
 
 
 試合を総括すると、審判へのアプローチとして、日本はボール球を追いかけて三振ばかりしていたが、裏を返せばゾーンが安定しない審判にモリーナがうまくつけ込み、投手陣をリードして日本打線を牛耳った。一方日本投手陣は厳しいコースをボールにされ、四球でランナーを出し、甘いコースに入っては打たれ、自滅した。
 こういう審判に当たった時にどうアプローチするべきか、捕手の差が表に出た試合だったと思う。
 目立ったのはプエルトリコの積極性。甘い球は逃さず打つし、打席でも粘り強く、守備も積極的だった。積極的すぎて内川の当たりを三塁打にしたりもしたが、ミスも少なく、チームとして非常にまとまりがある。モリーナの存在がここまで大きいとは思わなかった。
 
 
 ベスト4で姿を消してしまった侍JAPAN
 大会を通して選手たちはよく戦ったと思うし、観戦していて興奮したし、忘れかけていた熱さを思い出させてくれた。
 選手の皆さん、スタッフの皆さん、お疲れ様でした!