【映画】きっと、うまくいく

 インド映画を初めて観ました。いやぁ、よかった。通販サイトやレビューサイトで高評価つきまくっている作品は基本的にケチをつけるつもりで見てしまう癖があるんですけど、それでも良かった! 

 ネタバレをふんだんに盛り込んでレビューというか感想をちょめちょめしますので注意ですよ。

 まず時間。3時間弱という一本完結にしてはかなりの長丁場でしたが、いやーまったく気にならない。それどころか一日で2回見てしまった。休日を選んで一度目は自分一人でじっくりと、二度目は同日夜に嫁さんに猛プッシュしながら一緒に見ました。

 

 次に内容。青春群像劇っていうんですか、ぼかぁこの時点で好みです。古今東西、男どもがノリと欲望に任せて馬鹿やる話が大好きなんですよ。ゲームでも小説でも漫画でも映画でも。同じ映画で言えば覚えてるところではハングオーバーとか。大好きですね!

 今回見た『きっと、うまくいく』は、全体的にコメディタッチではあるけれど、インドの抱える社会問題(競争社会、自殺率、教育論)に切り込みつつ、家族愛あり、友情あり、恋愛ありとまぁ割とフルコースで色んな要素を盛り込んであるんですが、にもかかわらずまったくとっちらかってない。現実→回想→現実→回想、と語り手に情報を小出しにさせる手法がこれでもかと生きている。3時間という量に対するストーリーの分配、見せ方、順番、重さ、全体的なバランス感覚が神がかっている。

 

 ただ、自分は大好きですがと前置きしつつも、この映画は手放しで絶賛されにくい要素もあるんですよ。青春群像であるということは主要キャラは若者、学生であるわけで、登場人物はそらもう人間的に未熟なんですね。作中で主人公のランチョーの言動なんて酷いもんです、主義が異なる同級生に対して下手すりゃ退学レベルの仕打ちをかましたあげくに怒り心頭の相手に「まだわからないのかなぁ」的なノリ。そう、基本的に自分は導いてやってるんだというスタンスなんです。どの立場に立って観るかによるけど、これが鼻につく視聴者はけっこういるんじゃないのかね。自分は映画なればこそのこういう破天荒なキャラは好きだけどね。

 で、先にちらりと述べたけど、この映画の最も優れているところはバランス感覚だと思うんですよ。若者サイドに限らず登場人物みんな長所も短所も持ってて人間くさい。ランチョーで言えば機転が利いて応用力があるのに刹那主義というか後先考えない言動が目立ちますが、根は友人想いでいいやつです。主人公サイドのキャラはみんな善悪両面できちっとキャラ立ちしているので大丈夫なんですが、悪役サイドの学長やチャトルにも注目してほしい。ランチョーにはめられて「僕が何をした!?」と激高していたチャトル君。そこは俺も同情したね!ランチョーまったく悪びれてないし、ひどすぎる。で、チャトルはこういう目にあってもいいように徹頭徹尾イヤミな性格のクソ野郎として描かれています。いわゆるギャグキャラとして作者の生贄にされた位置づけですね。ただ、現実パートに注目してほしいのですが、チャトル、ぞんざいな扱いの割にめっちゃ出世してるんですよ。大学時代の成績も二位で大企業の副社長で妻子もいて、ってめっちゃ人生成功してるだろ!と。ランチョーの引き立て役でハイ終わり、ってだけじゃないんですよね。ランチョーをずっと目の敵にしているけどまぁやられたことを考えたら当然だし、ひどい目にあわされた分反骨精神やらで頑張って成功している。それはそれでひとつの人生。あれ最後、たぶん契約してもらえますよね。ランチョーに負い目があるから。まぁ、とどのつまりは主人公サイドはしょっちゅう馬鹿やってるけど、そのしっぺ返しは毎回受けているわけで、イーブンなんですよね。うんうん、酒に酔ってこういう馬鹿やっちゃうよね、って生暖かい視線を送れる。後先考えずに全力に生きるのが若者の特権ぞよ。

 

 ちなみに一番好きなシーンは学長がランチョーにペンを渡すところです。物語の冒頭でランチョーの素朴な疑問に咄嗟に答えられず「後で教える」とその場しのぎをした学長と、モナの結婚式にて学長に対して車のバッテリーからコンバーターを介して発電できる(だっけ?)装置云々……などとその場しのぎで切り抜けたランチョー。どっちもその場しのぎで終わるネタかなぁと思ったら、実はどちらも伏線でここで一気に回収されるわけです。実際にその装置を実用段階まで作り上げていて、緊急事態に応用して孫の命を救ったランチョーと、入学時の疑問にきちんと答えを調べており、それを伝えた上で「なんでも自分が正しいと思うな!」と、それまでのランチョーの言動を考えれば一番刺さるであろう説教をかました学長、一連のシーンは二人ともかっこいいですねぇ。それまで学長に対して言い返していたランチョーの態度にも注目、本当にいいシーンだった。

 というように、悪役サイドでもしっかり見せ場があるのがいい映画たるゆえんですよ。値札野郎は悪役っていうかギャグキャラですね。学長は完全にラスボス。チャトルがどっちつかずなんで、あと1フォローあればよかったのになぁと思いつつ。ランチョー絡みだと性格の悪さしかクローズアップされないんだもの。ちょっとかわいそうかな。

 

 ラストの落ちは、入れ込み過ぎて予測とかまったくしてなかったんで、ランチョーが電話するまで気付かなかったです。楽しみまくった結果だね!

 

※↓は字幕版ですが自分は吹き替えで見ました。断然そっち派です。オールイーズウェー

きっと、うまくいく(字幕版)

きっと、うまくいく(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video