【WBC】日本優勝への道のり〜ドミニカを倒せ!〜

これまでは日本の試合、日本の選手のことだけ書いてきたが、残り2試合、相手もほぼ絞れてきたということで、日本が優勝するまでの道のりについて触れようと思う。
相手がどこだろうが、どっちみち準決勝、決勝と戦うのだから順番なんて関係ないのでは?という向きがあるかもしれないが、まったく違う。
まず、投手陣について、日本の陣容が特殊ということを理解してほしい。
日本の登録メンバーを見ると、能見、沢村、田中、杉内、前田、内海、大隣、摂津、(涌井)と、実に13人中9人が先発投手だが、他国の事情はまったく違う。こんな(怪我への)怖いもの知らずな連中、日本だけだ。
アメリカは先発投手が5人で、うち1人(デトウィラー)をロングリリーフとして起用している。残りはリリーフ専門の投手たちだ。いずれもMLBで結果を残している投手で、量、質ともに大会屈指と言っていい。
 
 
さて、問題はドミニカだ。
ドミニカの投手陣はメディアではあたかも大会屈指のように書かれているが、実際は大きな弱点を孕んでいる
ブルペンは確かに強力で、昨年のMLBシーズン防御率0点台だったクローザーのロドニーをはじめ、MLBで一年間ブルペンを支え、70試合前後投げて防御率が2点台だったリリーフ投手がざっと見て4〜5人はいる。
その一方、名前も知らず、MLBではないとして、どこで投げてるのかもわからないような投手も数人いる。
しかし最大の問題は先発投手だ。
 
3月11日までに登板したドミニカの先発投手は、ワンディ・ロドリゲス、エディンソン・ボルケス、サムエル・デドゥーノの3人。
うちボルケスは、3月8日のベネズエラ戦という大事な一戦に先発し、なぜか初回だけ投げて1イニングで降板しているようだ。
何らかのアクシデントがあったのか調べてないのでわからないが、とりあえずボルケスも健康ということで話を進める。
まずはエースのワンディ・ロドリゲス。
長らくMLBヒューストン・アストロズに在籍していた先発左腕で、2012シーズン途中、ピッツバーグ・パイレーツに移籍した。
MLBでの評価はローテーション2番手〜3番手タイプで、2009年以降、毎年のように30試合先発、200イニング前後を投げ、3点台の防御率、10勝を期待でき、チームに一人は欲しい計算できる投手だ。
以前はイニング数に近い奪三振数を誇っていたが、2012シーズンは三振率が減り、205.2イニングで139奪三振
球種は直球(フォーシーム、ツーシーム、カッター)、カーブ、チェンジアップで、直球の平均球速は89マイル程度(142km/h前後)という、際立った特徴はないものの、キレが良く、大崩れしない。支配的な投球をするわけではないが、MLBで長年スターターをこなしているだけあり、投球術を心得ている。
ドミニカのエースであり、先発の中で唯一頼れるピッチャー
 
そう、信頼できるのはロドリゲスだけなのだ。
続いて2番手と思われるエディンソン・ボルケスについて。
こちらはMLBサンディエゴ・パドレスに所属する先発右腕。2008年に彗星のごとく現れ17勝6敗3.21と名を上げたが、その後は不調や怪我で鳴かず飛ばず、昨年久しぶりにパドレスで年間通して先発ローテーションに名を連ねたが、MLB屈指の投手天国ペトコ・パークを本拠地としながら11勝11敗4.16と、振るわない成績だった。何よりデビュー前からの課題だった制球難は改善しておらず、182.2イニングで四球105と、9イニング換算で5つ以上の四球を出してしまう。
球種は直球(平均150km/h前後)、シンカー(150km/h前後)、カーブ、チェンジアップ。あそこまでシンカー一辺倒ではないが、台湾の王建民から制球力を奪ったようなスペックの投手だ。
出来れば短期決戦で使いたくない投手なのは言うまでもない。日本からすれば、付け入る隙は十分にある投手である。
 
そして3番手と思われるのが、3月10日のスペイン戦で先発していたサムエル・デドゥーノ。
ドミニカの先発陣は、ここから質がガクッと落ちる。
デドゥーノの経歴だが、まったく聞いたこともなかったので調べてみると、現在はツインズ所属の29歳の右腕で、マイナー暮らしが長く、チームを転々としながら、10試合以上登板したのは昨年が初めて。15試合に先発し、79イニング、6勝5敗、4.44、WHIP1.54(かなり悪い)。被本塁打は79イニングで10本と多い。スペックはボルケスを一回り悪化させたような投手で、昨年だけでも79イニングで実に53もの四球を与えている。
カーブ、チェンジアップ、カッターを駆使するグラウンドボールピッチャーなのに四球も被本塁打も多いのは、そもそもコントールが悪すぎるためだろう。直球は平均144km/h程度。
一言で表すと、典型的なマイナーでくすぶっている投手だ。
 
3月10日の同じ試合で救援し、3イニングを投げたシモン(アルフレド・サイモン)は、2011年までボルチモア・オリオールズに所属。2010にクローザー、2011年に先発である程度の出番があったが、いずれの年も5点近い防御率、WHIPは1.5前後と、戦力とはならなかった。しかし2012年、シンシナティ・レッズに移籍して開花し、ロングリリーフとしてブルペンに待機し、36試合で61イニングを投げ、2.66と結果を残した。平均152km/h前後の直球(フォーシーム、ツーシーム、カッター)、スライダー、スプリット。飛躍のきっかけはわからないが、2012年はスプリッターの比率を減らしてカッターを多めに投げていたのが理由かもしれない。
他の投手の調子次第では先発に抜擢されるか?ただ、結果を残したのが2012年だけで、2010年以降は先発をしていない投手ではあるので、読みにくい。
 
さて、こうして眺めると、ドミニカの投手陣は球に威力のある投手が多いが、安心して先発に送り出せる投手がワンディ・ロドリゲスしかいないのがわかっていただけたと思う。
ここまでの日程のように、一日おきで試合なら、強力なリリーフをマシンガン継投でしのげるが、15日以降はちょっと事情が違う。
 
日本に最も有利な展開を予想すると、アメリカが全勝で2次リーグ2組を1位突破する場合だが、その場合のドミニカの日程は、
15日、アメリカと対戦 → 負ける
16日、プエルトリコと敗者復活戦 → 勝つ
17日、再びアメリカと2次ラウンド1位決定戦 → 負ける
18日、日本と準決勝
 
おわかりいただけただろうか?
日本も、10日、12日とオランダを相手にしたが、オランダ側は11日もキューバと戦って3連戦しており、「オランダもピッチャーのやり繰り大変やなぁ…」などと同情の声も上がっていたが、ドミニカが2位でグループ突破した場合はなんと最悪、4連戦の4戦目に日本と戦うことになるのだ。
 
もちろん15日の試合も負けられないし、16日の敗者復活戦にまわろうものなら、間違いなく11日に投げたロドリゲスをここで投入することになるだろう。
決勝が20日なので、頼みの綱のロドリゲスは敗者復活戦で先発させたら、それ以降起用できなくなるわけだ。
よって日本としては、アメリカに全勝してもらい、ドミニカがただでさえ数の少ない先発を使いきり、強力なリリーフを連日マシンガン継投させて疲弊したところで勝負となる展開が理想である。
 
※ちなみにアメリカは、13日に先発したエースのジオ・ゴンザレスが18日/19日のどちらだろうと準決勝にぶつけてくると思われるので、日本としてはできれば避けたい。
 
ドミニカの手薄な先発陣、そして最悪の4連戦。これが上手くはまってくれれば、文字通りの打線頼みのマシンガン継投が見られるかもしれない。
そういうわけで、頑張れ2次ラウンドのアメリカ!!ジオゴンとは当たりたくないんや!!