第2ラウンド日本VS台湾

  あえて無機質に記録してみると、あと一本が出ずに得点できない日本だったが、0−2から8回表に日本が追いつき、その裏に勝ちこされ、9回2死から日本が3−3に追いつき、10回表に日本が初めてリードし、そのまま4−3で日本が勝利しました。
 どう表現していいかわからないが、個人的には第2回WBC決勝並の興奮を与えてくれたゲームでした。この試合を現地で見ていた人、テレビで観戦していた人、特に途中で風呂に入らなかった人、おめでとう!
 
 
 

例によって試合を振り返りながら出場選手の寸評を。出場選手多いわ!
 
【投手】
能見 篤史---◎→△ 崩れたのは3回だが初回から制球がついていなかった。前回までの面影はどこへやら。阪神ファンによるとこれが平常運転らしい。ランナー出すまでは素晴らしいPでランナー出すと沈むと。プレッシャーに押しつぶされた形か。押し出し四球で先制点を与え、3回途中にお役御免。
摂津 正-----◎→○ なんだろう。全体的にいい球を投げているのに、本戦になってから登板するたびにタイムリー浴びてる。そのタイムリー浴びる球だけ真ん中のド失投。5回裏に追加点を与えた時点では暗雲たちこめどころかすでに絶望感が漂いはじめていた。
田中 将大---○→○ 6回7回を完璧に抑え、8回表の同点劇につなげる。8回の失点は間違いなく捕手が阿部から相川に替わった影響。7回まで絶大な威力を誇っていたスプリットを封印して無死2、3塁にするってどういうこった? しかも思い出したように投げて読まれて打たれている。田中自体はキューバ戦から調子は上々。
山口 鉄也---○→○ シーズン中ほどいい球ではなかった。どちらかというと相手のミスショットに助けられたが、内容はともかく無死1、3塁から点を与えずに2死までこぎつけた。これが非常に大きかった。

沢村 拓一---△→△ そして出てきたのが沢村。正直、なんで!?と思った。スライダーはとんでもないところにすっぽ抜けるし(打者の頭のもっと上)、どうするんだこれ状態だったが、荒れていたのが良かったのか打者が強引に打ちにいってサードゴロ、ピンチを脱した。結果オーライだが冷や汗がドッと出た。
牧田 和久---○→○ 同点に追い付けばこっちのもの、先行なのでクローザーを真っ先に出しちゃう。ヒットと犠打、敬遠などでピンチは背負うが、巧みな軽打が光っていた3番は歩かせて正解。4番を高めの浮き上がる速球でビシッと三振。バントへ果敢なダイビングキャッチといい、痺れた。
杉内 俊哉---○→△ 勝ち越した10回の裏、牧田続投かと思ったら杉内が出てきた。嫌な予感。やっぱり球速出てないよ。直球が130km/h台前半で明らかにシーズンより遅い。変化球の威力も半減。連打でピンチを背負うが、最後は遊ゴロ併殺でゲームセット! 勝ったから良かったが、この球威ではあまり終盤の競った場面では使いたくないと思った。他にいなければ仕方ないのだけども。
 
 
【打者】
角中 勝也---○→△ おかしいな。代打で出てくると選球眼を発揮したり仕事するのに、先発だと…。今日の日本は王建民に対して低めを捨てる対策を取っていたが、角中はそれとは別にスイングが大きくて高速シンカーの変化量についていけず3打席凡退。あまり去年は見なかったけど、バット短く持ってる割にスイングが大きい打者だ。日本人投手の球はミートできても、王やMLBの投手が投げるようなムービング系には弱いんではなかろうか。
長野 久義---△→△ 汚名返上のチャンスを与えられるも前座というか空気だった。不調だった阿部と坂本はタイムリーを打ったが…。特に9回の打席では初球攻撃、ど真ん中の直球をミスショットしてセンターフライ。ゲッツーでも打てば試合終了のところで初球から振って行ったのは、個人的には○。狙い球がきたのならしっかり振るべき。
井端 弘和---◎→◎ 誰がなんと言おうと今日のMVP。低めを捨てて高い球をセンターから右方向へもっていく技術といったら! スイングの技術もほれぼれするが、何よりその選球眼の高さがひときわ輝いている。素晴らしい。
内川 聖一---◎→○ チャンスでは打てず。しかしチャンスメイカーとしてヒット2本。さすがに毎回毎回期待されていては打たない日もあるか。
阿部 慎之助-○→○ 1次ラウンドのキューバ戦では4打席凡退ながら快音を響かせていたが、今日は3打席目までタイミングが取れてなかった。しかしここで打たねば男が廃るどころか卵を投げつけられそうだった8回のチャンスでは、見事ライト前に痛烈なタイムリー。ようやっと1本出たか!!
本多 雄一---○→○ 代走OK。ナイスラン。
相川 亮二---○→○ リードはクソだったけどバッティングでは右打ちでヒット。うーん、ベテランの味ですな。
松田 宣浩---○→○ 代走OK。ナイスランその2.
糸井 嘉男---○→○ バント失敗もあったが、長打ありフェンス際の大飛球ありと調子は好調。最後の打席ではチャンス拡大の四球。選球眼も維持している。タイミングが取れている証拠やね。
坂本 勇人---△→△ 同点タイムリー含む2安打で雑音も小さくなるだろうが、いい当たりは打てていない。また、守備ではつまらない送球エラーが×。
中田 翔-----○→△ 最後の勝ち越し犠牲フライで許されたっぽいが、今日は全然打撃はダメで、チーム方針であったであろう低めを捨てることもできず凡打を繰り返すわ、8回は台湾4番の打球を目測を誤って変な追い方で二塁打にするわ、あやうく戦犯になるところ。あれは捕れる打球だった。本職レフトなんだからしっかり。
稲葉 篤紀---○→○ 前の試合で1本出たのが良かったのか、下位打線ながら3安打で上位打線につなげていた。稲葉の復調はチームにとってもの凄く大きい。第2回WBCでも地味ながら、決勝では二塁打に犠打にと貴重な働きを見せていたのだ。
炭谷 銀仁朗-○ 最後に杉内をリード。てっきり西部バッテリーでいくのかと思ったが、無事に終わって何より。
鳥谷 敬-----△→○ 「歩いたら、走っていた」何を言ってるかわからねーと思うが、俺にも(略) 間一髪セーフで井端の神タイムリーにつながった。MLBの2004年プレイオフレッドソックスデイブ・ロバーツを思い出したわ。って誰がわかるんだこのネタ! 犠打2つも決め、手堅く貢献。
 
 
 
 ここまでのゲームは投手陣に助けられることが多かったが、はっきり言ってそこまでみんな調子がいいわけではない。今日の能見はぐにゃ〜〜だったし、摂津は何故か息を吸うように1失点するし、田中も研究されてるのか配球次第でつるべ打ちされる。が、これはむしろ他国の集中力を褒めるべきかかもしれない。特に今日の台湾打線は甘い球は当然打つとして、時には厳しい球も上手く打ってヒットにしていた。第1回WBCとはまるで別のチーム。日本では台湾リーグ内のゴタゴタばかり報道されるけど、確実にレベルアップしている。今年一番どころか前回の決勝以来のナイスゲーム。
 
 今日の試合で目覚めた選手、重圧から解放された選手が何人かいると思われる。打てる打てないじゃなくてどうやって勝つか、チームに貢献するか。今日の打線は中盤までは王にかわされて一本が出ないキューバ戦のようなストレスフルな状態だったが、ここまでブレーキだった阿部と坂本で追いつき、井端神でまた追いつき、四球→犠打→犠飛と、チームプレイを重ねて1点をもぎとって勝利した。素晴らしい試合でした。MVP? 井端しかいない。
 
 それにしても熱い試合だった。東日本大震災での暖かい支援といい、今日の好ゲームと言い、台湾、ありがとう!