’09WBCあれこれ

 半年ぶりに書いたと思ったら第二回WBCの総括です。
 適当に書き溜めたものを投下。長いです。
  
※追記
 ニコ動画で神MAD見つけたから見たらいいと思います → 侍ジャパン!エクスタシー(WBC日本代表×リトルバスターズ!)
 全ルート攻略は難しそう、っていうかタグ秀逸すぎだろ。
 村田アフターの発売日はいつですか。
 
 
 以下、雑感。
 
 
 今回のWBCは非常に難しかった。運営面やルールはあらかじめ飲み込んだものとしてそれについては意見は述べない。
 リーグ戦とトーナメント方式の中間のようなダブルエリミネーション方式だったわけだが、原監督には短期決戦の鉄則はそのまま適用して采配をふるってほしいと当初は思っていた。即ち、調子の悪い選手は切り捨て、調子の良い選手をどんどん使うことだ。しかしこれが、全体を通して、非常に難しかったように思う。投手はともかく野手だ。各選手、調子が一様に不安定だったからだ。昨日打ったかと思えば今日は音なし、かと思えば別の試合ではいい働きをしたりと、前日までの結果を元にしてオーダーを組んでいいものか大いに迷うところだった。絶好調と言える選手がおらず(強いて言えば青木がそうだが準決勝以降は調子を落とした)、どの選手もある程度結果を残しているという、監督にとっては良い意味で頭を悩ます打撃陣だったことだろう。

 例えば怪我で戦線離脱した村田修一は数字だけ見れば十分に働いたと言える。2次ラウンドまでの出場だったにもかかわらず本塁打、打点ともにチームトップ、7試合中5試合で安打を放っているし、うち3試合は複数安打を記録した。しかし緒戦から日本代表の試合を追っていた視聴者の中には「いい加減、外せ!」とやきもきした方も多いだろう。打席によって内容に差がありすぎる上、本当に1点が欲しい場面ではまるで仕事ができなかったりと、4番として機能していたかは疑わしかったからだ。村田の打席を追っていると、「こいつは調子がいいのか? それとも悪いのか?」と首を捻ってしまう。まさに出たとこ勝負の打撃だった。逆に、その不安定さ故に最後まで起用を続けたのかもしれず、実際、怪我をした試合も2本安打を放っている。結果的には村田の起用は正解だったと言えるだろうが、もし全試合川崎を使っていたら?と考えると非常に判断が難しい。そういう意味ではイチローが最も出たとこ勝負だったわけだが…。
 
 今回の原監督の一番の英断は、「福留に見切りをつけ、岩村を使い続けた」ことだと思っている。
 メジャーリーガーだからと言って無条件に不動のレギュラーとして起用を続けるようでは異を唱えざるを得なかったが、そうではなかった。結果、代役(と言っては内川に失礼か)の活躍に繋がった。
 このメジャーリーガー二人の打撃に共通しているのは、選球眼に優れ、安打を稼げずとも四球で出塁することで帳尻を合わせられるという点だ。ただ、両者の打撃には大きな違いがある。岩村は不振時であっても選球眼の他にチーム打撃(逆方向、ゴロ打ち)に徹することでチームに貢献できるのだが、福留にはそれができない。基本的にチーム打撃はせず「自分の打撃」だけを追い求める(ように見える。少なくとも岩村と比べれば)打者であるし、不振時は選球眼さえも失いバットをくるっと3回振るか、ストライクを簡単に見逃して三振したり、あっさり打ち上げて凡退してしまう。これは日本時代にクリーンアップを任されていた打撃が残っている…というか変える気があるのかどうかも不明だが、これが今回のWBCにおいて先発から外される試合があり、シカゴ・カブスにおいてもシーズン後半でレギュラーをはく奪された原因ではないだろうか。松井秀喜岩村明憲は自分のスタイルを変えることでMLBに上手く適応した。が、福留はどうか?別に福留選手のバッティングスタイルを非難しているわけではなく、短期決戦においては(もしかするとシーズンでも)、福留の打者としての特性はあくまでプラトーンや代打向きで、調子や相性を考えて起用する選手であるという点を強調したい。ポジション、打順、控えの関係もあるが。
 岩村については打撃スタイルを考えれば2番あたりが最もフィットしたろうが、下位打線でも十分に存在感を発揮していた。打席に入るたびに何かやらかしてくれそうな雰囲気を持っていた。対アメリカにおける、3−2と勝ち越した直後のタイムリスリーベースなど、あの一撃で試合の流れを大きく引き寄せたと感じている。接戦からワンサイド気味になったポイントがあの打席だった。より感覚的に表現するなら、あのヒットから「イケイケ」「押せ押せ」状態に突入した。1次リーグでヒットが出ず、たとえタイミングが合わなくても何とかして出塁してやろう、チームの役に立とう、という気概こそが岩村の魅力であり、それこそが若手揃いの弱小レイズを地区優勝にまで導いた要因の一つである。チームのピースとして、この上なく重要な選手なのだ。
 
 
 その手腕を疑問視されていた(と思ったがどうなのか)原監督について。
 固定すると決めた選手はある程度結果が伴わなくても使い続ける一方で、そうでない枠にはベンチメンバーをどんどんつぎ込んでくるのが昨年の原監督の特徴だったように記憶している。その特性はWBCにおいてもいかんなく、とは言いがたいが随所に発揮されていた。大会後半になるにつれて思い切った策も見られ、小技と機動力を駆使するスモールボールを地で行っていた。ただ、スクイズバントを仕掛ければ面白いのでは?という場面が何度かあったが一度も見られなかったのは若干、心残りというか、単純に見てみたかった気がする。特に、決勝戦での城島は試合後のインタビュー含め、態度・打撃ともに酷かったので、もうスクイズのサインでも出しちまえよ、と思って観戦していた(笑)。
 
 最後の最後に帳尻を合わせてきたイチロー含め、野手陣は試合ごとに活躍する選手が変わり、良い意味で流動的であったように思う。今日は誰が打つのかわからないのだから、相手にしてみれば誰をマークすればいいのかも難しい。前回のイチローのように流れを作る選手がはっきりと浮上していればまだ対策も立てられたろうが、今回の日本代表は、昨日打った選手が平気で凡退を繰り返す一方で別の選手が仕事をしてのけるといういい意味で嫌らしさを兼ね備えた打線だった。イチローの言葉にも表れている通り、全員が全員をフォローし合う、総合力の高いチームであったように思う。結果として、クリーンアップを3つ作りどこからでもチャンスを作り得点できる打線、と謳った原監督の構想は功を奏したことになる。これは見事としか言いようがない。
 
 
 
 もう一つ、短期決戦を勝ち抜く鉄則として絶対的なのが投手力の高さである。そしてそれ以上に重要なのが采配である。いくら投手の地力が高くても、選手の好不調を度外視して起用していれば肝心なところで痛い目に遭うのは、北京五輪と言わず日本プロ野球の歴史においても幾度となく示されてきた。藤川を抑えから降ろしダルビッシュを起用したのも、一時的に同点に追いつかれたとは言え、その采配には賛成だ。藤川は失点こそないものの本来の球威にほど遠いのは明らかだったからだ。ならばこうだといともあっさりブルペンで一番調子の良いピッチャーをつぎ込む原監督の采配は、クルーンを簡単にマウンドから降ろした昨年の日本シリーズを彷彿とさせた。一発勝負では、その時、一番いい球を放る投手を起用する。簡単なようで決断に踏み切るのが難しい投手起用を、この大一番でやってのけた原監督の手腕は間違いなく名采配と呼べるものだった。もちろん、勝ったから言えることだが。
 
 先発投手には非の打ちどころがない。とりあえず松坂は米国戦こそが昨年の「四球王」の真骨頂を発揮していたように思う。レッドソックスでは、5回1/3を被安打3四球4失点1とか、6回を被安打2四死球4で失点2とか、5回を四球6被安打1、無失点とか、そんなピッチングばかりだった。MLBの記事にも書いてあったが、キューバ戦は間違いなく彼の今シーズンのベストピッチングとして取り上げられるだろうな(笑)。
 ブルペンでは杉内と田中が本調子で、出番が少ない投手もよく機能していた。渡辺俊介をもっと投げさせてもいいんじゃないかと思ったが、彼の調子が悪かったというより、田中、杉内と控えていたため、優先順位の関係だろうか。確かに8回以降は投げさせたくないタイプの投手ではあるが…。山口、田中、涌井、岩田をワンポイントとして起用するという贅沢さ。しかもそれぞれが自分の役割を認識し、全うしていた感がある。誰がMVPか?という問いに「投手陣です」と答えても過言ではない。
 
 

 他、決勝ラウンドに進出したチームについて軽く触れる。
 
ベネズエラ
 昨年マリナーズで投げるダルマ、もとい投げる火ダルマだったシルバ(4勝15敗/6.46)を準決勝で先発させている時点で諦めていると取られても仕方ない。というのも、17日に先発したフェリックス・ヘルナンデスは22日の準決勝に使えたはずだったからだ。MLBでもトップクラスの先発投手を温存した理由はなんだったのか。緒戦でもシルバ‐ヘルナンデスのリレーだったが。シルバはオランダ、イタリアといった打線の弱いチーム相手に抑えてはいたが、もともと投球イニングをはるかに上回るヒットを打たれる投手で、四球は出さないものの、制球が定まらない日はことごとく甘いコースに集まって炎上するパターンが多く、とてもじゃないが一発勝負で、好球必打を徹底してくる韓国相手に使いたいタイプの投手ではない。メジャーリーガーが頭を並べるカナダ、米国、ドミニカ、プエルトリコキューバクラスになると通用しない投手だ。もし報道の通りヘルナンデスを決勝に向けて温存したのだとしたら、韓国を見くびっていたことになる……というか、一番の問題はシルバとヘルナンデスの他に候補がなかったことで、この大舞台で投手力不足が露呈してしまった格好になり、さらに打線も力を発揮できなかった。先発メンバーのほとんどがMLBのオールスター経験者という豪華な顔ぶれだったのだが、全体的にロートルやクリーンアップを任されている選手ばかり(先発メンバーのうち、ホセ・ロペス、カルロス・ギーエン、マグリオ・オルドネス、ミゲル・カブレラボビー・アブレイユメルビン・モーラまでが各チームで3〜5番を打っていた選手)で、確実性と長打力はそこそこ高いが小回りが利かず戦略性に欠けた布陣であった。怪我持ちも多く、機動力を使える陣容とは言い難い。欲を言えばバリエーション豊富な打線に組み上げたかったところ。もっとも、米国ほど選手に恵まれているわけではないので、これが精いっぱいの陣容だったのだろうが……
 
 
・米国
 辞退者続出もなんのその、絶対数の多さにものを言わせてMLBオールスタークラスの選手がずらりと並ぶ強力な陣容であったことは間違いない。大会中に怪我人が続出したもののジーター、ロバーツ、ロリンズなど、機動力と嫌らしさを兼ね備えた選手から、ペドロイア、ユーキリス、ライトといった常に全力プレイを心がける選手、ブラウン、ダンといった大砲まで一通り揃っている。一見、バランスの取れた選出に見えなくもないが、片手落ちというか詰めが甘いというか、疑問符を投げかけたいポイントがいくつかあったのは事実。本職のレフトを守らせても当代屈指のファンタジスタであるアダム・ダンをDHではなくライトやファーストで起用したのはその最たるものだ。攻撃力を重視するあまり守備力を軽視したとしか思えず、せっかく攻守ともにバランスの取れたメンバーを選んだのに、このような起用をしていたのではまるで意味がない。レフトでさえ守らせたくないくらいだ。ジーターやロバーツの失策は想定外というか防ぎようもないので割り切るしかないが、ダンの緩慢な守備は二遊間のそれとは質がまるで異なる。実際ダンの守備によって何点損したかわからない。ショートのジーターが立場上外せず、どうしてもロリンズを使いたかったゆえの苦肉の策だろうか? 確かにロリンズは一人気を吐いていたのだが……。そしてファーストを守れるのがこれまた本職でないデローサしか残ってなかったのも厳しい。本来パワーヒッターが収まるポジションなだけに、離脱したユーキリスに替わる本職ファーストのパワーヒッターが欲しかった。そうすれば、ビクトリーノは代打、代走要員としてベンチに残しておくとしても、守備の悪いダンとブラウンのどちらかを代打に回し、デローサをライトに収めることができ、パワーを下げずに守備力の強化を果たせたはずだ。
 投手陣はとにかく先発投手のコマ不足が目についた。ピーヴィとオズワルトは間違いなくMLBの先発右腕で五指に挙げられる投手だが(残りはティム・リンスカム、ロイ・ハラデイ、ブランドン・ウェブ。次点でジョン・ラッキー)、実力のMAXを引き出せるように調整できてなければくその役にも立たないことは今回の結果の通りだ。調子はともかく、先発投手が他にテッド・リリー、ジェレミー・ガスリーの計4人しか居なかったのが痛い。ピーヴィのように本調子から遠い投手を後ろに回すことができず使い続けるしかなかった。これはドミニカなど他の国にも言えることだが、先発投手を多く揃えて調子を見ながら中継ぎにつぎ込みスクランブル体制を組むという、日本のような起用法は取られなかった。リリーフ投手が強力である裏返しという見方もできるし、単にコマが足りないという見方もできる。米国の辞退者が全員イエスと頷いていれば、日本と同じような編成になったのかどうかは疑わしいが…。ブルペンは地力は高い投手が揃ったものの絶対的なクローザーはおらず、実績はあるものの衰えたり低迷している選手や、昨年のみ活躍した選手など、計算の立ちにくい陣容だった。
 総合して、優勝するだけの駒は揃っていたが、戦略面での失策が肝心なところで表出し、準決勝敗退。
 
 韓国については5試合戦って嫌というほどわかっていると思うので割愛。
 
 
 

 他国のミスの多さ以上に日本の強さが光った、そんな大会だったように思う。