リリイ・シュシュのすべて(ネタバレ)

 岩井俊二の映画を見るのは、花とアリス、PiCNiCに続き三作目。一番見たいのはスワロウテイルなんだけどまだ見てない。
 というわけでリリイ・シュシュのすべてを見ました。二人以上ならわからないけど、一人で見るのがすっごいきつかった。今風に言えば中二病臭の塊なんですがまさに14歳の少年たちの話なわけだからクリティカルすぎる。逆にここまで出せるのがすごい。岩井俊二の他の作品にも共通するんだけど、リアルかどうかはさておき、生々しすぎて直視したくないって気持ちが随所で入る。目を背けたい。実際沖縄のシーンではずっと目を背けてたよ。どれくらい犯罪出てきたろう? いじめに始まって、恐喝、強姦、万引き、自殺、殺人、援助交際……くらいか。うーん、オンパレード。
 主人公(蓮見雄一っていうのか、彼)の最後の行動がわからなくて、ラストの幕切れも唐突すぎてびっくりした。もう死語かもしれないけど、オフ会やったことある人ならピンとくるかもしれない。ネットで親しかった唯一の心の拠り所である相手が、自分を追い詰めてるいじめっこリーダーその人だった、という展開。さてどうする主人公!ってとこで、刺しに走る心境がわからんかった。最後の希望が絶たれたってことなんだろうか? 俺には、逆にこの絶望的な境遇を脱出するための最高の手段を得たようにしか見えなかっただけに、自分の正体をばらしに行ったのかと思ったらナイフ刺してるからめちゃくちゃ驚いた。というか唖然とした。え、そこ、正体ばらして和解するところ違うの、と。まあ、星野の言動からして正体ばらしたらばらしたで和解する可能性は低そうだけど、でも、彼もあの掲示板を拠り所にしてるところがあったからなんとか……ならないか。和解したならしたで問題山積みっぽいしなー。うーん、難しいね。
 不満だったのは、久野陽子がどう見てもブサイクなのと、茶髪の不良二人がよわっちすぎるところ。なんで不意打ち一回かまされただけで絶対服従モードになってんだよ。カッコ笑いつけてもっかい書くけど、なんで不意打ち一回かまされただけで絶対服従モードになってんだよ(笑)。普通にあの二人でかかれば星野に勝てそうなんだけどな。星野以外は戦力外しかいないし。それとは別に、トップに一人が君臨していて残りが取り巻くっていう力関係は、男子中学生の構図ってよりは女子のそれに近かった気がする。まあ、男子だとあんまないよね、そういう上下関係。先輩後輩なら話はまったく別だけど、同学年であれはなんなんだろう? ぶつかり合って親睦が深まるのはわかるけど、上下関係になってしまうとは。などと、取り巻き全員に嫌われてるのに君臨し続けた星野の支配力の強さが不自然すぎて飲み込めなかった。後半の後半あたりで下克上っぽいあれはあったけど、遅すぎだろう。あと、腑に落ちないといえば、星野のグレっぷり……というか変化が、いろんな犯罪出すためだけに無理やり鬼畜モードにしてみましたって感じがして変だった。グレる理由があったのは説明されていたからわかるけど、悪役にしすぎてノンフォローなんだものな。もともとああいう嫌な人間だったんかな。
 PiCNiCはラストでものすごいカタルシスがあったけど、リリイ・シュシュは最後は尻切れトンボなんじゃないかなと思う。エンドロールが流れ始めて「……え? え? これで終わりなの?」と、揶揄ではなく本気で目が点になったのはこれがはじめてだった。オチてなくないか、あれ。
 あと、個人的に、剣道部時代に駅のホームで星野をからかった他校の生徒にメンチ切ってた彼が好きです。後半出てなかったけど。