オリジナル笑顔で三回目 No.008 パースペクティブ過剰読解!

http://text.ivory.ne.jp/ori3/
 
 全部読み終えましたので、カテゴリ別、あるいは個別に作品について語っていきます。
 初っ端はこれ。『No.008 パースペクティブ過剰』です。
 ネタバレがないように気をつけてのことだとは思うのですが、各所で感想を見ていると、「すごい」や「圧倒的」といった形容詞で評されていることが多く、内容にはほとんど触れられていないんですね。で、端的に言って、ちゃんと読んでいるのか、と(笑)。いや、もちろん俺がわかるはずもなく一方的に疑っているだけなので、読んでいる人は肩で風切ってスルーしてくださってください。その言葉を待っていたぜ!という人や、実はダーッと流し読んだだけなんだよね、という方は見てくれるとありがたいかなあ、なんて。
 
 結論から述べます。
 「なんか文章いっぱいだから適当に流し読みました」ですますには非常にもったいない作品だと思ったような気がしなくもない。
 中身もあるし、全体をよく見渡さないとミスリードになったり、そもそも何の話かわからないまま読了してしまう恐れもあります。
 俺自身ミスリードしている気マンマンのまま、書いた感想を転載しますね。
 いきなり壮絶にネタバレしていますので注意!
 
 
 
 
 
 
 作品全体をもってして謎解きを仕掛けている作品であると踏んで、計5読しました。
 10年前に田舎で起こった残虐な殺人事件をそこに住まう様々な人々にアプローチしつつ、事の起こる前後を包み込むように描いた話なのだと読み解きましたが、この時点で間違っていたらこの感想は読み飛ばしてください。
 
 全部で11パラグラフありましたが、1〜10、つまり最後以外はすべて過去の出来事を追いかけているのだと、最後の一文から推測したうえで。
 
・キーマンは青年(東京さん)と老夫婦
 
 この二者間で起きた悲劇を様々な角度からスポットライトを当てつつ描いてあり、それを読み解いていく……ということでいいのかどうか。
 
 10年前の出来事を自分なりに整理してみると、
 
バスから老夫婦が降り立ち → 迷いながらトラックの運ちゃんに教えてもらい → 店に立ち寄り腹ごしらえをして→また迷いながらも中村に道を訊ね → そこに西山が自転車で通りかかり → 猫が鉈をふるって草刈りしている青年にエサを求め → 青年宅に老夫婦到着 → 猫が青年宅を出てそのはずみで少年転ぶ → 覗くと鉈をふるって殺害中 → 自首したのか、警察どやどや
 
 ……という形になりました。老夫婦が訊ねてきた直後にそれまでと変わらず草刈りを続けているのは不自然なので、二度目の鉈をふるう描写で殺害しているのだと推測しました。
 
 青年は即座に自首……したのかどうかわかりませんが、すぐに警察が駆けつけ、両親殺害で逮捕。長い裁判のすえ、10年後に死刑判決――それを最後のパラグラフの新聞記事においてそれとなくにおわす、と繋げました。
 
 こんなところでしょうか。いや、合ってるか非常に自信がないんですけど。
 これが合ってると仮定した上でいくつか――
 
 
・青年の行動についての描写
 なぜ青年が老夫婦を殺害しなければならなかったのかわからず、青年に関する描写から動機を探りました。
 
>月に何度か、彼が見知らぬ中年の男や女と一緒にいるところを見かける。どうやら町から一緒に戻ってきているようなのだ
 
 中年であるし、迷いまくっている老夫婦とは違うのだと思います。ではなんなのか? この描写は何を示唆しているのか……単に友人を家に上げているだけなのか、それとも老夫婦のように殺害してどこかに葬っているのか……紐解く鍵がわかりませんでした。ヒントはどこにあるんだ……
 結局、青年の動機は推測にすら届かず、この作品は「事件の背景」ではなく「殺人事件そのもの」こそを描いたものである、と結論しました。
 
 
・紙切れについて
 キーアイテムのひとつなのは明白なのですが、攻略のヒントが見つけられませんでした。序盤に出てきた、
 
> 初老の男が茶色のジャケットの内ポケットから取り出したメモ帳を開き、挟まれていた紙切れを広げて、周囲の景色とそれを見比べているところ
 
 この紙切れと、
 
>が、ごめんなさい、と、ってくれれば、します、もう、わりにしましょう、ただ、で、手を、わせてください。
 
 この紙切れが同一のものであるとは考えにくく。前者は地図のようなので。
 後者にどんな漢字が埋まるのか……ヒントはどこにあるんだ……ただ老夫婦のものとするなら、死を受け入れてるようなニオイがしなくもないのですが……
 老夫婦と青年との関係が最後までわかりませんでした。来訪の直後にやられているので衝動的に殺されたとも取れるし、紙切れから推測して、みずから殺されにきて殺されたとも取れる。 
 
 
 考えれば考えるほど推測が推測を呼び、「これだ!」という正解にたどり着けませんでした。仮に自分の推測が合っているとしても、きっと腑に落ちないだろうと思います。推測だけなら、『そもそもその紙切れは老夫婦のものなのか? 神社の方向から飛んできたのではないか? なぜ少年は神社で遊ぶ? なぜ祖父のナイフを持ち出す? 神社には青年が葬った死体がいくつも埋めてあり、少年はそれを解体して遊んでいるのでは……?』と、いくらでもできるので。要するにヒントがないままあてずっぽうに言ってるだけなのです。
 たぶん無理だろうなと思いつつ、解説を切にお願いしたいところ(笑)。