素朴な疑問

 高校時代は自転車通学だった。大学時代も自転車通学だった。バスに乗る機会はほとんどなかった。だから自分が学生だったころがどうなのかはよくわからない。
 四月の頭から、運転の感覚を取り戻すまでバスで通勤しているのだが、ある日の帰り道のことだ。市街地から住宅街へ向かうバスに、どう見ても帰宅中の女子高生が乗っていたのだが、降りるまでずっと鏡を片手に、もう片手で顔にぱたぱたと何かを塗りたくっていた。マスカラだかマラカスだかファンデーションだかはっきりしなかったが、正体は問題ではない。重要なのは帰りのバスで化粧をしていたという事実だ。それも一人だけではなく、何人もだ。いったい、あなたがたは、これから家で何をするつもりなのですかと。飯食って風呂入って化粧落として寝るだけ違うんかと。誰に見せるための化粧だよと。バス停から家までのわずかな距離にいるかいないかわからない通行人のため? バスの乗客はどう認識されているのか気になる。これは偏見かもしれないが、公衆の面前で平然と化粧している人を見ると、うわあ、と思ってしまう。人の目を気にするあまり人の目を気にしないという、本末転倒な状態に思えるのだけど、どうなんだろう。そこんとこどうなんですか、女子高生のかたがた。彼女らにとって、鏡と向かい合っている時間は、バリヤーを張っているような、あるいは試合中におけるタイムのような感覚なのだろうか。俺からすると、食事中に「あ、ちょっとごめん。フンッ(放屁)」とやられるくらい目を疑ってしまう状態なのですが。
 これが行きのバスならわかるのだけど、帰りのバスで、ショッピングモールから乗ってきた、買い物帰りの女子高生でした。目を見開いてチェックしていたので間違いない。謎だけが残りました。
 推論を進めると、これからまだ人と会う、という結論になりました。
 
 
 子どもたちがチンチンをむき出しにして俺に立ち向かってくるんですが、どうしたものか。誰が教えたんだよ、あんな遊び。