二泊三日

 たまには真面目にレポートしてみることにする。金曜日から今日まで、二泊三日の旅行に行ってきた。この旅行は私の親が経営する会社の旅行であるが、二年の一度の周期ですっかり恒例になっているもので、社員全員家族ぐるみで行くという、どちらかというと身内の旅行に近い雰囲気である。私が物心ついた数年前には既に旅館から景色にかけて記憶があるので、一体何年前からなのか訊いてみたところ、どうやら十数年前から行っているようである。記憶に留まるはずもない遠い昔のことだ。
 新潟県に接していると言っても良い福島県の端っこの山奥、そのまた奥にある湖のほとりに一件の民宿がある。元々が学校だったというその古びた旅館は、来るたびにどこかセピア色の感情を心の底から呼び覚ましてくれる。車で30分走らないとコンビニ一件ないような場所で、ゆっくりと体を休めるために訪れた。山の上から湖を見下ろせる露天風呂もあり、24時間開放しているので、いつでも好きな時間に入浴することができる環境だ。ゴールデンウィークから時期をずらしたのが功を奏したのか、夏場にならないと人が来ないのか、宿は私たちの団体で貸切状態であった。学校の造りをそのまま拝借している旧館と、その後に建てられた新館とがあるが、新館の二階は我らが席捲した。おとなしく和菓子やお茶を出してもらおうか。
 総勢二十名をゆうに超えようかという団体であるが、家庭数、つまり何組の家族が居るのかというと、七組である。そのいずれにも子どもがおり、子どもの中では私の家族が最も年長であった。小学生以下が全体の五割を超えようという多子家庭の数である。私は子どもたちとトランプに興じ、野球をし、一緒に温泉に浸かった。午前中と午後に三時間ずつ、キャッチボールとノックとトスバッティングをした。少年野球でならしているという小学四年生の子どもと特に仲良くなった私は、二人で延々とボールを投げ合っていた。野球を経験したことのない私よりも彼はずっと上手かった。現在は少年野球に所属しており、一塁手として試合に出ているが、投手の座を狙っているという。まだ三十路を通ったばかりの若い父親に度々注意を促されながら、彼は真剣に私とキャッチボールをした。
 夜中は子どもたちの父親に誘われて、四人で卓を囲んだ。私によく懐いていた子どもの父親が一人、別の父親が一人に、私と私の兄の四人である。どうやらあまり麻雀の経験がないらしく、父親のうちの一人は事あるごとに弱気な発言を洩らしていた。最終的には、運に助けられた私が六万点ほど稼ぎトップを掠め取ったが、立直をかけると下家がいきなり当たり牌を振ってくれるという状況は、楽しさ半分つまらなさ半分である。私の場合、相手がルールさえ知っていれば大勝か大負けかしかしない運頼みの麻雀なので、次にやったら負けそうではある。長年に渡っての負けても失うものが少ないという環境が、私から手堅さを奪っていった。しかしそれは性格に因るところも少なからずあるので、仕方ないものとしてもう諦めている。麻雀は結局、半荘一回で終了した。
 湖のほとりまで、子どもをたくさん連れて散歩した。インディアンポーカーで盛り上がった。夕食の席、大広間で騒いだ。桜が満開で天気が吹雪という気候の中、泥まみれになって白球を追いかけた。たまにガラスも割ったりした。
 名物の栗どら焼きは、あんこがぎっしり詰まっていた。