たい焼き焼けた

 逆から読んだらたけ焼き焼いた。ほらね?

 いつものスーパーにいつものように買い出しに行ったら、平日たまに見かけるたい焼き屋さんのワゴンが駐車場にあったんですよ。
 たこ焼きとかも売ってる移動式屋台というんですかね、ワゴン型でスーパーやホームセンター、大型本屋や、それらが並び立った非モール型の商業施設の駐車場でやってることが多いんですが、全国的にあるものなのかちょっとわからないけど、店主がアンパンマンみたいで一目で覚えます。
 現在私はアパート暮らしなわけですが、実家で暮らしてたころ、実家から一番近いホームセンターにこのおっちゃんがよく出没していたわけですよ。
 震災前だから少なくとも五年以上前から。
 で、たこ焼き買ったりたい焼き買ったりして、ちょくちょく利用してたんです。
 
 今住んでるアパートは実家から軽く15kmほど離れてます。
 ここから徒歩でも行ける最寄りのスーパーなんですが、そのおっちゃんが同じワゴンで同じようにたい焼き売ってるわけですよ。
 いつからか正確にはわかりませんが、多分こっちが越してきた後だったように思う。

 懐かしいなぁと思いつつ、たい焼きを買いながら聞いてみた。
「以前、○○あたりでもお店出されてました?」
「あぁ〜、出してましたね。何年も前かな」
「その時からよく利用してたんですよ」
「おっ。それはそれは!」
 自分で思ったよりもナンパ男みたいな口ぶりになってしまったことを嘆きつつ、特になんの発展性もない雑談を交わして、たい焼きを二つ買っていく。
 それからというもの、このおっちゃんを見かけるたびにたい焼きを二つ買っていく私。
 一匹(一枚?)120円で妻と自分の分だけなのでたいした出費でもないし、なんか見かけると買っちゃうんですよね。
 んな、劇的にたい焼きが食いてぇ!ってわけじゃないんですけど、妻と付き合い始めたころによく利用していたおっちゃんだったから、たい焼きを購入して持って帰って食すという一連の流れを通してノスタルジーに浸れるというか。
 人の好さそうなおっちゃんだから余計にね。

 で、今日も買ったんですが、その時の一幕。
「たい焼き二つください」
「はいよ! 味はどうします?」
「カスタードとチーズで」
「カスタードと、チーズね」
 おっちゃんがごそごそとたい焼き型の鉄板で再加熱している時に、小銭を取り出して240円置いておく。
 すると。
「あ、チーズはサービスで……いえ、これから作り直すとこだったんですよ」
「え、やった! どうもです!」
「いえいえ、へっへっへ」
 そしてまんまと一匹分の値段で二匹ゲットできたわたくし。
 さすがにおっちゃんの台詞を鵜呑みにするほど子どもじゃないし、方便と決めつけるほど老けてもないけど、追及が野暮ってことは確実にわかりますので、大喜びで持って帰る。
 
 物質的な動きとしては、なんでもない、ただ120円得したってだけの話なんですがね。
 家に帰って妻と二人で食べたたい焼きは、やっぱりいつも通り美味しかったです。